Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編

『カール』
『はい』

お父様は生真面目な顔でぼくを呼んだ。

『おまえの10歳の誕生日まで、あと1年半ある。その間マリアを作法の勉強という名目で我が家に逗留させ、どちらが公爵家の後継者に相応しいか判断しよう』
『……ありがとうございます』

まさか、ぼくの意見をそのまま取り入れてくれるとは思わなかった。
お父様にはぼく以外の子どもはいないから、ぼくが後継者から外れてしまえば、家督は弟のヨーゼフの血筋が継ぐ形になる。
貴族の家督相続は、法にも等しい強制力がある各特許状によって厳格に定められている。
歴代の王から授けられたそれに付帯条件を加えるだけでも、議会の承認と国王の裁可が必要。
ぼくの望みがかなえば、おそらく特許状の付帯条件はマリアが家督相続できるよう書かれるはず。

『……おまえがそう言い出すなら、相当悩んだ上での結論だろう。きっと押さえつけようとしたところで無駄。おまえの頑固さは母のマリ譲りだからな』
なんてお父様に苦笑いされて。やはり、愛する妻と息子のことはよく理解してるな、と照れ臭くなった。

『ただ、カール。これから十の誕生日まで、わざと手抜きをするな。全力で自分を磨く努力をしろ。どんな形で生きるにしろ、最後に頼れるのは己のみだ。必死であらゆる知識や技術を自分に身に付けろ。わかったな』
『はい、お父様』

お父様のその言葉は、大人になってもぼくの指針になってる。


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