Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
お父様には親友のアーベルの話もしておいた。
フリートホーフという腐りきった伯爵家をよい方へ変えるため、彼が継ぐに相応しい、と。もののついでという訳ではないけれどね。
「……どういう魔法を使ったんだよ」
数日後、グルンデシューレの教室でアーベルが苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「いきなり、僕にはフリートホーフ伯爵家の正統な後継の血が流れてる……って。王宮と伯爵家から使者が来て。久しぶりに帰ってきた父さんが卒倒したんだけど」
(さすがお父様。仕事が早い上に有無を言わさない完璧なやり口だ)
思わず顔がにやけそうになるのを抑えるのが大変だった。
お父様もただ闇雲に公爵家の権力を使った訳ではなく、皆を納得させるだけの材料があってこそ。その資料は大抵ぼくが用意しておいたけど、一番説得力があるものはお父様が1日で揃えたのだから。やっぱり優秀だ。
「なんで……って?そりゃ、君には継ぐべき理由がちゃんとあったからさ」
したり顔で答えたぼくに、アーベルは特大のため息をつく。あからさま過ぎるのはお互い様。
「……僕の6代前の妹が伯爵家の甥と結婚した……って……第一に貴賎結婚だし、伯爵家の記録から抹消されてるのに」
「その3代後には許されてるじゃないか。そして、君の家はその妹の子どもが相続してる……つまり、かなり薄いけど君にもフリートホーフ家の血が流れてるんだよ」
ぼくの読みは当たってた。あの石造りの家で庶民には考えられない、フリートホーフ家の特徴をもつ紋章を見つけた時。彼はきっと伯爵になると確信をしたんだ。