Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編


『誰だい、君たちは?』

厳重な警備の目を潜って現れたぼくたちに驚くことなく、開口一番にそう訊いてきたのはーーゲオルグ王太子殿下。 ミルコ女王陛下の実の弟であり、王太后の掌中の珠だ。

彼がいたのは宮殿の中でも最も豪奢で広大な、ひとつの屋敷とも呼べる王太子宮。
地下で繋がった脱出経路を利用して、ゲオルグ王太子に会う。ぼくらが叔父さんに頼まれたミッションだった。

彼つきの警備や侍女侍従がいなくなるほんの数秒間。ちょうど彼が一人になった僅かな間を突いて、ぼくらは彼と対面した訳。

『王太子殿下、どうかされましたか?』
『何でもない。ちょっと散歩にいってくる』
『わかりました。お供します』

彼は唇に指を当て、クイッと窓を指差した。そこから出ろってことか……

王太子殿下自らカギを開いて、僕たちを素早く出してくれる。背の低い灌木がすぐ目の前にあるのが幸いした。体が小さな僕たちだから隠れるけど、普通の大人なら無理だろう。

ゲオルグ王太子殿下は散歩をするふりをしながら、僕たちが隠れた庭園にやって来た。

『君たちは、王立グルンデシューレの生徒だよね?なぜ、こんな危険を犯してまでぼくに会いに来たの?』

王太子殿下は、ぼくたちの真の素性をわざと訊ねなかった。つまり、見つかってもハッキリとした身元はわからない、と惚けることが出来る。なかなか頭が回るひとだ、と感心しながらぼくは王太子殿下に奏上すべく、口を開いた。

『……不敬かつ無礼を承知で申し上げます。王太子殿下、姉上であられるミルコ女王陛下の待遇に関してです』

けれども。王太子殿下からは意外な反応が返ってきた。

『……姉上?それは、誰のことだい?』


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