Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編

思わず、アーベルと顔を合わせてしまった。
ゲオルグ王太子が、姉を知らない?

(そんなバカな……!仮にも王族のきょうだい。しかも両親が同じの家族なのに。ミルコ女王陛下が姉と知らない?いくらなんでもあり得ない!)

王太子殿下の様子を慎重に観察してみるが、聡明とはいえまだ10歳。本気で知らなかったらしく、困惑が滲み出ている。根は素直な質らしい。

……ならば、と1つの可能性が頭を過る。

(……ゲオルグ王太子には、最初からきょうだいが居なかったと?ひとりっ子として育てられた?)

あの、離宮での女王陛下へのひどい扱いを見ればわかる。王太后は本気で娘を亡き者にしようとしていた。ならば、息子に姉がいるとわざわざ教えないかもしれない。
なぜなら、早くいなくなる予定だったから。

(あの冷酷無残な王太后ならやりかねない……!)

ぼくが怒りで震えていると、王太子殿下から小声で問い詰められた。

『姉上とは?ミルコ女王陛下は遠縁の者と聞いたが……それは違うというのか?』

やはり、と言うべきか。王太子殿下は本気で知らなかった。王太后が厳しい箝口令を敷いていたのだろう。ミルコ女王が姉だと知らせるな、と。ああして離宮に追いやっていたのも、きょうだいと悟られないためだ。

(けれど……ゲオルグ王太子殿下は真実を知るべきだ。いつまでもぬくぬくと暖かい場所にいるだけでは済まないお立場なのだから……)

金に近いプラチナブロンドも、翡翠のようなグリーンの瞳も。造形は悲しいほどミルコ女王に似ていた。

それなのに……どうして実の娘にああまで手酷い仕打ちを。怒りを覚えながらも、冷静になれと自分に言い聞かせながら口を開いた。

『僭越ながら……王太子殿下に申し上げます。あなた様の姉上の現実を』

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