【短】今夜、君と夜を待っている。
「好き」
「俺も好きだけど、待て。あんまり言うな」
「……好き、高平くん」
「待てって」
耳についた赤いピアスに追いつくほど、高平くんの顔から耳まで染まっていく。
伝えたかった。
これまでずっと、言えなかったから。
知らなかったから言えなかったけれど、ずっと膨らんでいた。
ようやく名前を知った感情をぶつけたくて何が悪い、と大胆になる自分の一面に驚きながら、もう一度好きだといって口を噤み、ふとあることを思い出し、静かな空間を裂く。
「わたし、春乃にだけ高平くんと夜にメッセージ送りあってること話しちゃってた」
「それはもう、さっき呼びに来たからわかってた。俺も和泉には話してたし」
「……男の子も相談とかするの?」
あんまり想像ができない。
高平くんと和泉くんの仲がいいことだって、一緒に遅刻してきたときまで知らなかった。
「はやく言え、電話しろ、とか。そればっかりだな」
「先週電話かけてくれたのって和泉くんに言われたから?」
「いや、あれは……次は一週間後って思ってたら続きが届いたから舞い上がって、つい」
つい、だなんて語尾が掠れていくから、今度はわたしが照れてしまう。
好きな人となら尚更、自分が嬉しいことは相手も嬉しいものなんだと知った。