パトリツィア・ホテル
その時。


「いいえ、違いますよ」


教室内のザワつきを新宮くんの凛とした声が遮った。



「僕が一緒に学級委員をやりたいのは神澤さんじゃなくて、その二つ後ろの席の……」


(えっ……!?)


予想だにしていない言葉に、私は跳ね上がった。


「咲……さんでしたっけ?」


(えぇ〜〜〜!?)


突如、私の心臓はドックン、ドックンと高く跳ね上がった。

それと同時に、私の顔はかぁ〜っと火照ってゆく。




一体、どういうこと?

新宮くん……どうして私の名前を?

いや、それよりも何よりも……どうして、私なんかを指名するの!?



クラスのみんなも、同じことを思っているのだろう。


指名の直後……一瞬の沈黙の後、教室には先程にも増してザワつきのウェーブが広がった。





「は〜い、静かに!」

ナナちゃん先生は手をパンパンと叩いて、ザワつきのウェーブを鎮めた。


「それでは、指名された島崎さん。前に出てきて下さい」


先生に苗字を呼ばれても、まだ実感が湧かなくて。

立ち上がった私に集まる視線が痛くて……でもどこか、悪い気持ちはしなかった。


もしかしたら、王子様に見初められたシンデレラもこんな気持ちだったのかも知れない……なんてメルヘンなことを考えながら、私は夢見心地に新宮くんの隣に立ったのだった。
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