パトリツィア・ホテル




「咲ちゃんの家!? 行きたい! めっちゃ、行ってみたい」


新宮くんに話すと、彼はまるで子供のように瞳をキラキラと輝かせて食いついてきた。


「でも、本当に大丈夫?」

「何が?」

「だって、私の家なんて……ゆうちゃんの家とは全然違って、小さいし、狭いし、庶民の家で。それに、お母さんなんて、ただのパンチの効いたおばさんだし」


すると、彼の瞳は星が瞬いているかのように、さらに輝いた。


「いいじゃん! 憧れるよ、そういうの」

「えっ?」


憧れる?
私の話のどこに、イケメン御曹司様が憧れる要素があるんだろう……

そう、口にしようとした時だった。


「だって、俺。咲ちゃんみたいに、パワフルなお母さん、いないからさ」

「えっ、あ……」


そうだ、すっかり忘れてた。
彼には、お母さんがいなかったんだ。


「そう。あの、やたらでっかい家に帰っても、お父さんもいっつも忙しくしてていないから。だから、ずっと、憧れてたんだ、そういうの」


そう言う新宮くんは笑顔だったけれど、その奥に耐えきれないほどの寂しさを隠しているのが分かった。

そんな彼の、悲しいほどに綺麗な笑顔が私の胸に刺さって……だから私は、彼の寂しさを吹き飛ばすくらいに元気な声を出した。
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