パトリツィア・ホテル
「なぁ、咲ちゃん」

「…………!」

「あの横断幕みたいなのって……俺を歓迎してくれてるのかな」


私達の目はまず、我が家のベランダから吊るされたそれを捉えて……私は思わず絶句した。

それはキンキン、キラキラの装飾が施された横断幕で、道行く人は一際目立つその幕を、皆、一様に訝しげな表情を浮かべて眺めていた。

さらにその幕には、デカデカと「ようこそ、新宮くん! パトリツィア・グループの御曹司様〜!!」の文字が……!




「ちょ、ちょっと、お母さぁん!!」

私はまるで顔から火を吹きそうなくらいに熱くなって、新宮くんを案内するのも忘れ、我が家の階段をズカズカと上がって行った。

「あら、咲。早かったわね。もしかして、新宮のお坊ちゃんも? やだわ、まだ、ご馳走の準備が途中で……」

「そんなことはいいから! ベランダの横断幕、外してよぉ!」

「あら、どうして? だって、あんなに上手くできたのに……」

「いや、恥ずかしいだけだし! 新宮くんも、ほら、ドン引きして……」

そう言って彼の方を向くと、彼はお腹を抱えてクククッと笑いを堪えていて。

そして……

「あはは! あははははは!」

ついに堪え切れなくなったのか、大口を開けて大笑いし始めた。
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