パトリツィア・ホテル
お母さんは食事の準備をしているらしく……ようやく私の部屋で二人きりになった。


「いやぁ……本当に、楽しいお母さんだね」

新宮くんはまだお腹を押さえて、思い出し笑いを堪えている。

「楽しいって……もうやだ。恥ずかしすぎる!」

「そんなことないよ。すっごくいいお母さんじゃん」


そう言う新宮くんの顔は急に、少し寂しそうになって……

私は途端にシリアスな気分になった。


「ねぇ。ゆうちゃんのお母さんって……どうして、いないの?」


私は、ずっと気になっていて……だけれども自分の中でタブーにしていて、聞けなかったことを彼に尋ねた。

すると、彼は私を見て少し口角を上げた。


「お母さんは……捨てたんだ」

「えっ……」

「あの日。五歳の誕生日にランドへ連れて行ってくれた時。俺を置き去りにして、いつまでたっても迎えに来なかった。どれだけ待っても……」

「そんな……」


言ってから、私は気が付いた。

私はあの日……ゆうちゃんのお迎えが来るのを見ていない。

それは確か、ピエロに引っ張られて迷子センターに預けられ、二人して泣き疲れて眠っていて……

私、気がついたらお母さんの背中におんぶされていたんだ。
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