パトリツィア・ホテル



一緒の夕食を終えて、私は新宮くんを駅まで見送ることになった。

だって、玄関までお見送りをして彼との別れを惜しんでいたお母さんが、「新宮のお坊ちゃんは可愛いし、襲われでもしたら大変じゃない。咲、送って行きなさい」って……

完全に、男子と女子の立場、逆転してるし!

まぁ、別にいいんだけど……。



そんなことを考えて溜息を吐いていると、新宮くんの弾んだ声が聞こえた。

「咲ちゃんの家、すっごく楽しかった! お母さんも面白いし、温かくて……俺、本当に感動した!」

隣を歩く彼は、とっても嬉しそうに目を輝かせてはしゃいでいた。

「感動したって……そこまで?」

私にとっては全然普通の、パンチの効いたお母さんがいる、うるさい家庭なんだけど……。

そんなことを考えて不思議な気分になっている私に、新宮くんは屈託のない笑顔を向けた。

「うん! だって、俺……あんな元気で素敵なお母さんがいて、すっごく美味しいお料理を出してくれる。咲ちゃんの家みたいな家庭に生まれたかったって、ずっと思ってたんだもん」

そうだ……私にとって普通のことが、ゆうちゃんにとっては、全然、普通じゃなかったんだ。

彼の言葉で改めてそのことを実感した私は……純な笑顔を見せながら私の隣を歩く彼が切なくて。

だけれども、とても愛しくなった。
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