パトリツィア・ホテル
「ねぇ、ゆうちゃん」

「うん?」


私の声に振り向いた彼の顔が悲しいほどに綺麗で……

私は思わず、自分の唇を彼のに重ねた。


「う……ん」

誰もいないその通りで私達は暫し目を瞑って。

そして、私は顔を離してそっと呟いた。


「きっと……いい『家族』になれるよ」


照れ臭くて、『私達』って続けることはできなかったけど。

私の想いは彼に充分に伝わった。


「あぁ。俺達だったら……絶対になれるよ」


彼はそう言って、私をぎゅっと抱き締めてくれて。

そんな彼の体温は私の心を温めてくれて……

だけれども、私の体温もきっと、彼の心にとってかけがえのない温もりになることができている。


もう真っ暗になった駅近の通りで、私達はお互いにそのことを確かめ合ったのだった。
< 130 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop