パトリツィア・ホテル
「だって……どう考えても釣り合わないじゃない。大型ホテルの御曹司様と、庶民の私なんて」


すると彼は若干丸くしていた目をまた元の切れ長に戻した。


「そっか……やっぱり、覚えてないんだな」

「えっ?」


何のことだか分からない私を見て、彼は白い歯を見せた。


「ていうか、俺ら、同じ人間なんだし。釣り合うも釣り合わないもないっしょ」

「え、いや、でも……」


私は彼の普段の言葉使いにまごつく。

御曹司様といっても言葉使いは普通の男子……っていうギャップに変にときめいてしまう。


「そんなことより! この学校って、すごいよな。遠足の行先、生徒に決めさせてくれるだなんて」

「え、うそ……そうなの!?」

「あぁ……ってか、昨日、先生の話聞いてなかったのかよ。一昨年なんて、沖縄日帰りツアー行ったって話だったぞ」

「えぇ〜〜、遠足で沖縄!? あり得ない……」


昨日の私は完全に上の空だったが、少し冷静になると、エラく身分違いの集団の中に入ってしまったものだと思う。

そんな調子で、視聴覚室での話し合いは終始彼のペースに乗せられて、いつの間にか始業の五分前になった。


「あ、ヤベッ。遅刻だ」


彼は突如、立ち上がる。
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