パトリツィア・ホテル




「咲ちゃん、すっごいな。学年でも満点は咲ちゃんだけって話だし。学年トップじゃん」

「いや、でも……満点は今日の数学だけで他はいつも通りだし、数学もきっとまぐれで……」


帰り道でも彼に褒められて、私は何だかむず痒かった。


「ていうか、ゆうちゃんは何点だったの?」

「俺? 俺は92点だったな」

「え、いや。満点とほとんど変わらないじゃん」


私はふぅっと溜息を吐いた。

私のまぐれなんかよりも、安定の彼の方がすごい……

そう言おうとした時だった。




「でも……咲ちゃんのその『まぐれ』が本当にすごいものを産み出すんだよ」


彼は私を見てにっこりと笑った。


「えっ……『Story Maker』のこと? あれも、本当にたまたまで……」


そんなことを言って、むず痒さを誤魔化そうと首を横に振ろうとする私を、彼は真っ直ぐに見つめた。


「そんな謙虚な咲ちゃんが、好きなんだ」


私を見つめる彼は両手で私の肩を掴んだ。

夏の日差しに照らされた、真剣な彼の顔はとても綺麗でカッコよくて……

私はむず痒さも忘れて動けなくなって。

金縛りに遭ったように、私も彼の瞳を真っ直ぐに見つめた。
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