パトリツィア・ホテル
すると、クラス内で悪戯っぽい声の提案が上がった。


「そうだ! ここは学級委員長の権限で、パトリツィア・ランド貸切なんてどう?」

「あ、それ、いいかも! だって、いつ行っても混んでるし、まだ、全アトラクション乗ったことないもの」


(えっ、あの大型テーマパークを貸切?

確かにそんなことができたらすごいけど……本当に、そんなことできるの?)


書記係の私は、黒板に『パトリツィア・ランド貸切』と書きながら思った。


彼の方をチラ見すると、

「うーん、そうだなぁ」

制服のネクタイを触りながら考えていた。

その仕草がカッコよくて。

私はまた、見惚れてしまって……。


「分かった! パトリツィア・ランドはこのクラス、1-Cのに、一日貸し切ることができるように手配するよ」


彼の出したその結論でさえ、一瞬実感が湧かなくて。

(え〜〜、マジすか〜!?)

脳内がそんな叫びで埋め尽くされたのは、クラス内のみんなが同じ言葉で騒ついてから、しばらく経ってのことだった。


「じゃあ、取り敢えず場所の第一候補はパトリツィア・ランド。貸切については、うちの父親……社長に交渉してから、また話し合いの場を設けたいと思います」

「よ! 流石、新宮!」

「ステキ〜!」

クラスメイト達の歓声の中、爽やかに締めた彼の隣で、冴えない私はただぺこりと頭を下げた。
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