パトリツィア・ホテル
放課後……一緒に歩く帰り道。

遠足の打ち合わせをするぞってことで一緒に帰ることになって、本当ならこのシチュエーションにドキドキするはずなんだけど……

私の頭の中は不安でいっぱいだった。


「ねぇ、新宮……くん。本当に、あんなこと、できるの?」

「えっ?」

「いや、だから……貸切なんて。だってほら、パトリツィア・ランドの方も経営とかあるだろうし……」


しどろもどろな私を見て、彼はニッと白い歯を見せた。

「さぁな」

「え、いや、さぁなって……。もうみんな、すっかりその気だし、後戻りできないよ!」

「そっか。そうだなぁ……」


彼はまた、ネクタイに触れて考える。

やっぱり、カッコいい……。

またしても私は彼のその仕草に萌えてしまった。


「そうだ!」


何を思いついたのか、彼は突如悪戯っぽい笑みを浮かべた。


「ねぇ、咲。俺と一緒に社長……父親に交渉しに来てよ。今から行こうぜ!」

「えぇ〜〜!?」


何故に、いきなり呼び捨て!?

いや、それよりも何よりも……。

私、いきなりパトリツィア・ホテルの経営者のアジトに上がりこむの〜!?


「さぁ、咲。早く行こうぜ」

「いや、ちょっと……。まだ、心の準備が……」


すると、新宮くんは悪戯っ子な笑みを浮かべた。


「ったく、咲の心の準備ができるのを待ってたら、日が暮れるぜ。ほれ!」

「い、いや……ちょっと待っ……」


その瞬間。

私の心臓は、またしてもドクンと跳ね上がった。

新宮くんがまた、私の手を握って引っ張ったのだ。


(ヒャア〜〜!)


私は周囲の女子達の嫉妬を孕んだ眼差しを気にする余裕もなく、ただ彼に引っ張られて行くのみだった。
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