パトリツィア・ホテル
「ここが……パトリツィア・ホテルの経営社長宅……」


目の前に迫り来るようなその豪邸にただただ圧倒される私を見て、新宮くんはクスっと笑った。


「社長宅だなんて、大袈裟だなぁ。ここは俺の家。上がってよ」

「え、上がってだなんて、そんな軽く……だって私、男子の家に上がったことなんてないし」

「なーにをグズグズ言ってるんだって! そんなこと、全然気にしないって」

「あなたが気にしなくても、私は気にするんだけど」


そんな言い合いをしつつも、私は結局その家に上がることになった。


「すごい……」


まずは玄関からしてすでにおっかなびっくり。

こんなに広い玄関、初めて見た。

床は大理石製なのか何なのか、ツヤツヤと光ってるし、壁には高そうな絵がかけられている。

私は足がすくむ想いがした。

そんな私を見て、彼はクスっと笑った。


「なーにをマゴついてるんだよ。ほれ!」


彼はまた、私の手を取って家の中へと招き入れた。


(ヒャ〜〜)


彼に触れるのは三度目……なんだけど。

それでもまだ慣れずに、私の胸の中では心臓がドックンドックンと踊っていた。


私は顔が火照り、ふやけた気分のままこの家の応接室に通された。

「すごいね……」

玄関からしてすでにすごかったけど、応接室もやっぱりすごくて。

飾られている壺や石の彫刻に目がいき、「これって、いくらなんだろう……」なんて、ぼんやりと考えてしまった。
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