パトリツィア・ホテル
彼はそんな私を見てクスっと笑った。

「咲、そればっか」

「え?」

「さっきから、『すごい』しか言ってなくない?」

「だって、本当にすごいんだもん。まるで、違う世界にいるみたい……」

言葉に出して、私はより一層実感してしまった。

そう……この人は、私とは住んでいる世界が違うんだ。

私を学級委員に指名してくれても、私の手を握ってくれても……。


「咲?」

急に黙り込んだ私を見て、彼は不思議そうな顔をした。

その時だった。

「お、勇人が女の子を連れてくるなんて珍しいね。初めてじゃないかい?」


ちょっと眉毛が太めでダンディな四十歳くらいのおじさんが応接室に入ってきた。

「お父さん、紹介するよ。こちらは高校の新しいクラスメイトの島崎さん」

「初めまして。し……島崎といいます」


少し噛んでしまい、新宮くんはプッと吹き出した。

そんな彼を横目で睨む私に、新宮くんのお父さんは気さくに話しかけてくれた。


「やぁ、勇人にこんな可愛いらしい女の子のお友達ができて、嬉しいよ。だってほら、こいつ、学校に友達おらんだろ?」

「え……いや、そんな。とんでもない。新宮くんは、クラスで大人気ですよ」
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