パトリツィア・ホテル
(こ……こいつ、ハメたなぁ……)

私が睨むと彼はさらに可笑しそうに、必死で笑いを堪えている風だった。

(…………!)

こいつ、私をからかってる……。

でも私は睨むばかりで、言葉は声にならなかった。


「咲さん? どうしたんだい?」

彼のお父さんは不思議そうな顔で、私をまじまじと見つめてきた。

(何、この状況。何なのよ……!)

考えがまとまらない……。

でも、父親の顔はどんどん怪訝な表情になる。

だから、考えがまとまらないながらも、私は口を開いた。

「あ、あの……実は私達のクラスの春の遠足でパトリツィア・ランドに行くことになりまして」

「ほう……ランドに?」

「そ、それで……どうか私達のクラスのために、パトリツィア・ランドを一日貸し切らせてもらうことはできるでしょうか」

私は社長様を前に、そのまんまのことを率直に言った。

「は? 貸し切りって……? 君と勇人のクラスの、えーと……」

「はい、四十三人のために、です。もちろん、四十三人分の入園料、フリーパス代は学校から出ますので」

私がそこまで言うと、彼の父親は目を丸くし鳩が豆鉄砲を食らったような表情をしていた。

でも、私は大真面目。

真剣にその父親を見つめた。

えぇい、もう、ヤケクソだ。

どうにでもなれ!
< 21 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop