パトリツィア・ホテル
「プッ……」


私の目をまじまじと見つめていた父親は、俄かに吹き出した。


「ハハハ、ワッハッハ。いやぁ、面白い子だねぇ」

「す、すみません」


私は豪快に笑う彼の父親にタジタジで、小さくなった。

しかし、父親は真っ直ぐに私を見つめた。


「そうだね。君達のためにランドを貸し切ってやりたいのは山々なんだが……うちも実は、経営が厳しくてね。簡単にはそんなことはできないんだ」

「そこを何とか……。だって、もうクラスメイト達はその気になってるし、後戻りできないんです」

「俺からも頼むよ、お父さん。クラスメイト達はみんな、楽しみにしてるんだ」


(こいつぅ〜! 『俺からも頼むよ』って、どういうことよ?)


私は隣の彼をキッと睨んだ……のだけど。

真剣な彼の顔がまたカッコよくて……どうしても恨むことができなくて。

カッコよさって、罪だ。

私はつくづくとそう思い、溜息をついた。



彼のお父さんは胸の前で腕を組み、しばらく考えていたが……腕をほどいて、真っ直ぐに私の顔を見た。

「分かった。君達がそこまで言うのなら、一日、君達のクラスに貸切ろう」

「え、本当ですか? ありがとうございます!」

私は、今度はホッとした溜息をついた。
< 22 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop