パトリツィア・ホテル



翌日の土曜。


「ねぇ、お願い。大至急、今日一日で私にファッション、伝授して」


私は手を合わせて朱里に頼みたおした。


「え、あんた。本当に私服、それしか持ってないの?」


朱里は私が私服として着ている色褪せた黄色いTシャツにヨレヨレのジーパンを見て、眉をひそめた。


「だって、制服があるし、私服なんて着る機会ないと思ってたんだもん。高校合格のお祝い金はパソコン買うのに使ってしまったし……」


私は涙目になった。

すると、朱里は溜息をついた。


「しゃあない。今日一日で、あんたをお洒落さんにしてあげるわ」

「ホント!?」


(やった! 持つべきものは、高校デビューのお洒落な友達……)


私は心の中でガッツポーズをした。


「その代わり、私にも紹介しなさいよ。あんたの彼の友達の……絹川くんでいいから」


絹川くんとは、新宮くんとよくつるんでいる町病院の後取り息子で、その甘いマスクが女子達に人気だ。


「いや……だから、彼氏じゃないって!」

「何言ってるの? 明日、デートに行くんでしょ? もう、彼氏も同然じゃない」

「違……それに、絹川くんも同じクラスでしょうが! 紹介って……自分で話しかければいいじゃない」

「それができないから、あんたに頼んでんじゃん」


そんなことを言い合っているうちに、私達はファッションショップにたどり着いた。
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