パトリツィア・ホテル
「すごい……これが、私?」


朱里に服を見立ててもらい、美容院に連れて行ってもらい、メイクアップしてもらって。

洋服屋のスタンドミラーを見た私は自分の目を疑った。

スタンドミラーに映っていたのは、ふわりとした黒髪に可憐な薄緑のワンピースを纏った清楚な美少女。

いつも洗面所の鏡で見ていた、伸び過ぎた前髪で顔を隠した『地味な自分』とは似ても似つかない『私』の姿だったのだ。




そんな私を見て、朱里は腰に手を当ててハァーッと溜息をついた。


「……ったく、憎いよね、あんた。本当はクラスの誰よりも可愛くて綺麗なのに、隠してるなんてさ」

「え、クラスの誰よりも? いや、そんなこと……」


ミラーに映る顔を真っ赤にする私に、朱里は目を瞑って首を横に振った。


「いいや、私は気付いてたよ。小さい頃から、ずっと……あんたが一番可愛いって。だから、新宮くんがあんたを指名した時。実は私、彼は見る目あるなって思ってたんだもん」

「え、いや……あの指名は単なる悪ふざけだって」

「そんなことないよ。私には分かる……新宮くんはあんたに惚れてるんだって」

「い、いや……そんなワケない……」


まだ煮え切らない私を見て、朱里はまた深く溜息をついた。
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