パトリツィア・ホテル
遥か遠い昔……まだ五歳くらいの頃。
初めて会った『ゆうちゃん』っていう、泣き虫な迷子の男の子の手を引いて……まずは泣き止んでもらうために、子供用フリーパスでメリーゴーランドの青い馬車に乗って。
そのことを思い出した私はクスっと笑ってしまった。
「確かに乗ったこと、あるかも。まぁ、あなたとは似ても似つかない、小さな小さな泣き虫坊やと一緒に……だけどね」
私が言うと、彼は思わず吹き出した。
「そっか、俺とは似ても似つかない小さな小さな泣き虫坊や、か」
そう呟いた彼はしかし、悪戯っぽい眼差しを私に真っ直ぐに向けた。
「でもその時って、咲ちゃんも小さな小さな泣き虫ガールじゃなかった?」
「え、いや。誰が泣きむ……」
私はそう口に出した瞬間……
(え、どうして……あの時のことを新宮くんが知ってるの?)
そんなそもそもの疑問が頭にふっと浮かんだ。
「まさか……」
今、私の前にいる新宮くんは、私の記憶の中の泣き虫坊やとは似ても似つかないほどにカッコよくて、身長も高い。
だけれども……
「ゆうちゃん?」
綺麗な切れ長の目、上品な口元……その顔のパーツごとには確かに、私の記憶の中の泣き虫坊やの面影が残っていた。
初めて会った『ゆうちゃん』っていう、泣き虫な迷子の男の子の手を引いて……まずは泣き止んでもらうために、子供用フリーパスでメリーゴーランドの青い馬車に乗って。
そのことを思い出した私はクスっと笑ってしまった。
「確かに乗ったこと、あるかも。まぁ、あなたとは似ても似つかない、小さな小さな泣き虫坊やと一緒に……だけどね」
私が言うと、彼は思わず吹き出した。
「そっか、俺とは似ても似つかない小さな小さな泣き虫坊や、か」
そう呟いた彼はしかし、悪戯っぽい眼差しを私に真っ直ぐに向けた。
「でもその時って、咲ちゃんも小さな小さな泣き虫ガールじゃなかった?」
「え、いや。誰が泣きむ……」
私はそう口に出した瞬間……
(え、どうして……あの時のことを新宮くんが知ってるの?)
そんなそもそもの疑問が頭にふっと浮かんだ。
「まさか……」
今、私の前にいる新宮くんは、私の記憶の中の泣き虫坊やとは似ても似つかないほどにカッコよくて、身長も高い。
だけれども……
「ゆうちゃん?」
綺麗な切れ長の目、上品な口元……その顔のパーツごとには確かに、私の記憶の中の泣き虫坊やの面影が残っていた。