パトリツィア・ホテル
そして、そのお母さんは頬を涙で濡らした顔をこちらに向けて、にっこりと微笑んだ。


「お姫様……ありがとう。息子と娘に話しかけて下さって。おかげさまで、この子達の居場所がすぐに分かりました」


(あ、そうか。今の私はお姫様だから、話しかけたら目立つんだ)


今、自分がお姫様になっているという自覚がなくて。

だけど、周囲の自分を見る眼差しは高貴で可愛らしいお姫様をみる眼差しだったから、何だかむず痒かった。

舞踏会のシンデレラもこんな感じだったのかな……なんて、思ってしまった。



「どうだった? お姫様になれた気分は」

パトリツィア・ランド一周のパレードが終わって……夢から覚めた私を見て、新宮くんはにっこりと笑った。

「うん……何だか、自分がお姫様になったって自覚がなくて」

そんな私の言葉に新宮くんはクスっと笑った。

「確かに。咲ちゃん、見た目は高貴なお姫様になったけど、全然変わらなかったもんな」

「でも……」

私は夢のようなパレードを思い出して、うっとりとした。

「まるで夢のようで……悪いものではなくて。とっても幸せだった」

新宮くんはそんな私を見て、目を細めた。

「うん、俺も。やっと、夢を叶えることができたよ」

「えっ、夢?」

不思議に思って聞き返した私に、彼はこくりと頷いた。
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