パトリツィア・ホテル
「あの日と……同じ、花火だね」


新宮くんは呟いて、そして……私の手をぎゅっと握った。


「ええ……」


パァーン、パァーン、と次々に打ち上げられるその花火には、何だか不思議な力があって……この手を握る彼の温もりが、自然に私の心に馴染んだ。

それは、彼が私とは身分違いの御曹司様だということを忘れさせて。

私達はまるで、『あの日』に戻ったかのように、うっとりとその花火を見つめていた。


「なぁ、咲ちゃん。俺、実はあの日、初めて会ったあの日から、咲ちゃんのことが……」

「えっ?」

『パァーン、パァーン!』

打ち上げられる花火の音に掻き消されて言葉の続きが聞き取れず……

何を言ったか確かめようと彼の方を向くと、私に向けられた、その澄んだ真っ直ぐな瞳に意識が吸い込まれた。

動けない……まるで、金縛りに遭ったみたい。

すると、突如……彼は私の腕を掴み、背中に手を伸ばして。

私は彼に抱き締められた。


「え、ちょっと。ゆう……新宮くん?」

私は突然のことに、狼狽える余裕もなくて……不意に、唇に温かい感触が伝った。


(え……これって、新宮くんの唇……?)

それはとても甘ったるくて、温かくて。

目の前の新宮くんの目は閉じられていて……

紺色に移り変わった夜空に美しい花火が打ち上げられるその下で、私もそっと目を閉じた。

それは、まるで夢の中にいるようで……このまま時が止まって欲しい。

私はそう、願ったのだった。
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