パトリツィア・ホテル
「いえ、あの……」

「続きは、トイレで話しましょうか」

「いえ、だから……トイレには行きたくないんで」

「まぁ、そうおっしゃらずに」


そんな埒のあかないやり取りを続けて……段々と私がイラついてきていた時。

突如、凛とした声が放たれた。


「神澤さん! 咲ちゃんと何を話してるんだ?」


神澤さんとその取り巻き達が振り返ると、新宮くんが彼女達に冷たい視線を送っていた。

その視線は、あの時、新宮くんが私に絡んでいたヤンキー達に向けていたものと同じもので……

私はまた、ゾクっと鳥肌が立った。


「いえ、その……」


神澤さんは先程までの毅然とした態度が嘘のように、萎縮し始めた。


「何を話してたか、聞いているんだ」

「いえ、だから……おトイレにご一緒できないかなと……」

「トイレ? 高校生にもなって、一人でトイレにも行けないのか?」

「いえ、そういうわけじゃあ……」

「兎に角! 俺の咲ちゃんに変なことをしたら、絶対に許さないからな!」


新宮くんが発したその言葉は一瞬、その場に沈黙をもたらして。

私のことも金縛りさせた。


神澤さんの取り巻きの子達がざわつき始めたのは新宮くんが自分の席に戻ってからで……

けれどもすぐに一時限目の数学の教師が入ってきて、そのざわつきも鎮まった。
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