パトリツィア・ホテル
「……なんて。まだ、何となくぼんやりしたものがあるだけで、全然具体的なことは浮かんでないんだけどね」


私は自信なく、少し舌を出した。

しかし……新宮くんの瞳は先程よりさらに一層輝いた。


「咲ちゃん……それ、面白いよ!」

「えっ?」

「だって、ランドに行って体験した夢のような出来事……きっと、子供達もずっと、忘れられないし、忘れたくないと思う。それを自分だけの物語にしてもらえるなんて、僕はワクワクするな」

「でも……そんなこと、できるのかしら? 思いつきはしたものの、実現するのはおおよそ無理なんじゃないかって……」


キラキラとはしゃぐ彼に照れてしまって、さらに自信なく答えた。

しかし、彼はそんな私ににっこりと笑った。


「大丈夫。それをこれから、俺達で考えるんだから。俺達なら、絶対にできる」


彼はそう言って、私を真っ直ぐに見つめた。

その真剣な眼差しは私の心を射抜いて……私の胸の中でドックン、ドックンと激しく躍らせた。


「兎に角。俺も、考えてくるからさ。咲ちゃんは、あれも。頼むよ!」

「あれって?」

「あっ。忘れたら、俺はひもじい想いすることになるんだからな。忘れんなよ、お弁当」

「あぁ……」


そうだった。

私、彼のお弁当を……。

新宮くん、私の作るお弁当を食べて、何て言ってくれるかな?

そんなことを考えると、私の胸の鼓動はさらに拍車がかかって高鳴った。
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