パトリツィア・ホテル
「あ……あぁ、ごめん、ごめん。あまりに美味かったから、つい」

「ホント? そういうの、お口に合う?」

「うん、美味いよ。何だか、懐かしい味」


御曹司様にとっては庶民の味が懐かしい……そんなものなのだろうか。

「美味い」という言葉は嬉しかったが、何だか不思議な感じがした。




口に入れたものを食べ終えて、彼は話し始めた。

「それで、咲ちゃんが言ってる記録を送ることなんだけど。コースごとにストーリーの骨組みが決まっているんで、子供達の行動のパターン……それを考えられうる限りの選択肢に分類して、スタッフは子供達が実際にした行動を選んでボタンでも押す。そうしたら、割と簡単にできるんじゃないかな」

「なるほど……確かに、それなら可能性はあるかも。でも……子供達の行動なんて、予測不能なことも起こったりするわよ」


そう……子供なんて、基本的に行動が読めない。

パターン分けするなんて、考えられなかった。

すると、彼はニッと悪戯っぽく笑った。


「そこは、子供の心を持った咲ちゃんの腕の見せ所だよ」

「あ、ちょっと。それ、どういう意味よ?」

「だから。純粋な、って意味だよ」

「もう! 要するに、子供っぽいってことでしょ」


私の言葉に、彼は悪戯っ子の笑みを浮かべた。

私よりも寧ろ、彼の方が子供の心が分かるような気がするんだけど……そう思った。
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