パトリツィア・ホテル
「うーん、どこかなぁ? 改めて聞かれると、分かんないなぁ」


新宮くんは、白い歯を見せて頭をポリポリと掻いた。


「えっ、いや、分かんないって……。あなた、理由も分からずに私に告白を!?」


呆れて見つめる私に、彼はニッと笑った。


「でも、理由なんて、必要かな?」

「そりゃあ、何事にも理由はあるものでしょ」


頭の固い私を見て、彼は急に真面目な顔になった。


「俺は……そうは思わないけどな」

「えっ?」


私の胸は、またトクンと鳴った。


「あの日……咲ちゃんに会ってから、帰ってからもずっと、咲ちゃんのことが頭から離れなかった。それから高校に入るまで、ずっと会えなかったけど……それでも、あの日の思い出はずっとここ。俺の胸の中にあって、一時も忘れることはなかった。理由なんて要らない。これが……好きってことなんじゃないかな?」


彼の真剣な瞳に見つめられて……またもや、私の胸はトクン、トクンと絶え間なく鳴り出して。

彼の言うように、理由も分からずに好きってことがあるなら……私のこの、胸の高まりも苦しさも、『好き』っていうことなのかな?


昂ぶる想いに混乱して。

私はまた、自分の気持ちを言葉にすることができなかった。
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