パトリツィア・ホテル
心地よく湿った砂浜を歩いていた時だった。


「シクシク、シクシク……」


浜辺で泣いている女の人がいた。

女の人……いや、上半身は水色のビキニで隠していたけれど、下半身はピンクのヒレ、そして金色の美しい髪をした彼女は……人魚?


「ねぇ、どうしたの?」


私が声をかけると、その人魚はまるで今日の空みたいな青く澄んだ瞳を向けて。

その瞳に吸い込まれそうで、私はドキッとした。


「やぁ、サキ姫。そちらは……」


向こうから王子様の格好をした新宮くんもやってきて、私はさらにドキドキした。

新宮くんって、どうしてこんなにも王子様の格好が似合うんだろう……。




「……そう。人魚のネックレスを悪い海賊達に盗まれたのね」

「ええ。あれがないと私、海を自由自在に泳ぐことができなくて……」


人魚はまた、シクシクと泣き始めた。


「よし、じゃあ俺達が取り返してやるよ!」

「ええ、そうね。取り返してやるわ」


すると新宮くんは私を見て、吹き出した。


「何?」

「いや、だって……取り返してやるわ、だなんて。すごくパワフルなお姫様だこと」

「もう! そんなこと言ってる場合じゃないでしょ。早く、取り返してあげなくちゃ」

「はいはい、分かりました。サキお姫様!」


この世界の登場人物になりきっている私を見て、新宮くんはクスクスと笑っていた。
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