パトリツィア・ホテル
「なぁ、咲ちゃん」

「ん?」


もうすっかり動物達に慣れてウサギを抱っこしている新宮くんは、真っ直ぐに私を見つめた。


「前に俺に、聞いたことあったよな。どうして俺が咲ちゃんのことが好きかって」

「う……うん」


彼の急な言葉に、私の心臓はドクンと跳ね上がった。


「それは、咲ちゃんがそばにいると安心できるから……俺は気取らずに俺でいられるから。あの時。五歳の時も、そうだった。咲ちゃんと一緒にいると、安心できて、心地よくて。だから、ずっと、忘れられなかったんだ」


彼のその言葉を聞いて。

私もやっと、「ああ、そうなんだ」と思った。


イケメン御曹司として私の前に現れた彼だったけれど、一緒にいればいるほどに泣きそうなくらいに懐かしくて心地よくて。

そして、時々見せるカッコよさにドキドキさせられて。

五歳のあの時に一緒に迷子になって、頼りなかった彼だけれど……いや、頼りなかった彼だからこそ。

私はその時の彼も含めて、新宮くんのことが大好きなんだ。


「私も……」


抑えきれない言葉が私の口から出た。


「ゆうちゃんのことが好き。五歳の時……泣き虫だった頃を知っているけど。いや、知っているからこそ」


抑えられない想いとともに私の胸には幸せが溢れて……目には、熱いものが込み上げた。
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