カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~
「おはようございます。隼世さん」
「うわっ!」
俺はソファの上で腰が跳ね、弾みで立ち上がる。
振り返ると背後に近藤さんが立っていた。
すでにエプロンを着けた仕事着の彼女は、いつもの冷めた目でスンと俺を見つめて会釈をしている。
「お、おはよう、近藤さん。いつも言っているけど驚かさないで……」
近藤さんには朝食を作ってもらうため朝六時半からの勤務をお願いしているが、音もなく玄関の鍵を開けて中へ入ってきたらしい。
この人は異常なくらいに約束をきっちり守るため、信用している。
菜々花さんの世話係に近藤さんを選んだのはそのためだ。口止めをすれば、決して実家に漏らさない。
「隼世さんに、ひとつお伝えしておきたいのですが」
珍しい。俺はアイランドキッチンへ向かった彼女に目を向けながら「なに?」とうなずき、用件を促す。
彼女は冷蔵庫から卵を三つ出し、手を動かしながら続ける。
「星野様は、妊娠していらっしゃらないようですよ」
ちょっと一度では理解できなかった。
「……なんだって?」
「星野様は妊娠していないようです」
同じことを二度告げられる。
なにを言ってるんだ?と首をかしげたくなる気持ちがまず湧いてきて、その次に、そんなわけないだろ?と思考が停止する感覚に襲われる。