カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~

一緒に食べたくて、待っていたのに。素っ気ない言い方にムッとし、なにも答えずに席についた。

白ご飯にネギとつみれの味噌汁、筑前煮とほうれん草のお浸しに、明太子の入った卵焼き。ふたりで手を合わせてから、品数豊富な和食に手をつける。

「……あの、隼世さん」

「ん?」

私は安心したかったのだろう。甘い声で名前を呼び、わざと不安げな顔で彼に尋ねる。

「近藤さんがお迎えに来るのが大変そうなので、私ひとりで帰ってもいいですか」

彼は汁椀とお箸を持ったまま、ポカンとした顔で数秒固まっていた。

ダメだと言ってほしい。心配だからひとりじゃ帰せない、と。

しかしとくに表情を変えず、彼はすぐにコクンとうなずく。

「そうだな、菜々花さんも気を遣うだろうし、帰宅はひとりでもいいよ。近藤さんには俺が言っておくから」

……そっか。隼世さんはもう、私を心配していないんだ。

彼の言葉を理解した途端、心がサッと冷えていくのがわかった。
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