カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~
斗真さんの淡々とした言葉に思考を奪われながら、「提案……?」とやっとの思いでオウム返しをする。
「うちの両親も兄貴のコピーみたいに堅物な人たちだから、卑怯な手口を使ったと知れればきみは会社にはいられなくなるだろう。だが、もしきみが今すぐに兄貴のいる総務部から離れ、僕の秘書になると言うのなら、このことは黙っていようじゃないか」
「え、秘書、ですか?」
勝手に進んでいく話に混乱しつつも、理解できた一部に反応し「でも、総務部を離れるなんて……」とつぶやいて躊躇した。
「まあ最後まで聞いて。わかってる、これじゃ脅しだ。きみのメリットを話そう。給料アップは保証するし、僕について回れば玉の輿に値する御曹司なんてほかにいくらでも紹介してやれる。わざわざ回りくどいやり方で兄貴を囲いこまなくても、それで目的は達成するだろう?」
なんて言い草だ。私は隼世さんが御曹司だから好きになったのではない。
真面目で優しい、自分の信念にまっすぐ生きている彼が好きなのだ。