カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~

『……私のせいです。記憶がないとは微塵も考えずに、誤解を招く言い方をしてしまったので』

ドアを隔ててさらに距離があるのか、彼女のか細い声がわずかに聞き取れる程度のボリュームでこちらへ届いた。

「違う! なぜそうなるんだ! 悪かったのは完全に俺で……」

『もういいんです。少しひとりにしてもらえますか。なんだか疲れました』

これは、突き放されているのか。それとも本当に時間を置くべきなのか。こちらの言葉を受け取ってもらえない。

ひとりにしてほしいと本心から言っているのではないなら、さらに気の利いた言葉とはなんなのか。考えてもわからない。ああ、なぜこうも女性の扱い方がわからないのか。

今までの人生できちんと鍛練を積むべきだった。いざというときに一番大切な女性にかける言葉が見つからない事態になっている。

好きな人に正しく好きと伝える術も身に付けていないなんて、俺はどれだけ情けないのだろう。
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