カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~
「星野さん。こちらだよ」
エレベーターで最上階まで上がり、夜景が一望できるガラス張りのラウンジを手で指し示される。さすがに気分が乗らない私も「わぁ」と感嘆の声が漏れた。
食事をしているのは上品な方々ばかりで、騒がしく仕事を終えたばかりの私には場違いではないかと足がすくむ。
「お、いい反応だ。さすが肉食系の星野さん。あのイケメンが今日のお相手だよ」
「は?」
てっきり夜景を指しているのかという彼の示す方向を、もう一度辿ってみる。するとそれはラウンジの入口近くで立っていた男性に行きつき、その人は手を振りながらこちらへやって来た。
キラッと光を反射する腕時計を覗かせながら、後ろへ流す髪型からグレーのスーツまですべて整った完璧な装い。年もまだ若そうなのに、上流階級だと見てわかる男性だ。
「紹介するよ。彼は竹澤了くん。僕の友人で、かの有名なベビー服メーカー『株式会社バンブー』の御曹司だ。今夜は彼とふたりでゆっくり話すといい」
え……。そんな。いきなり知らない人とふたりで食事だなんて聞いていない。