カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~

わけがわからず、口が半開きのまま斗真さんを見上げると、彼はウインクをして「御曹司、紹介するって言ったろ?」と小声でささやいた。

「そ、そんな……」

まだ隼世さんを好きなのに、こんなにすぐに次を探す気にはなれない。
そもそも隼世さんだから好きだったのであって御曹司が好きなわけではないし、わざわざお金持ちの男性に限定されては逆に価値観の違いの弊害がありやりにくいものだ。

しかし竹澤さんは私に一歩近づき、右手を差し出す。

「星野菜々花さん、だね。斗真から聞いているよ。はじめまして。どうぞよろしく」

スマートで、やわらかい印象の人だ。
斗真さんが勝手に呼んだのだとしても、この人には罪はない。

「は、はい。よろしくお願いします」

控えめに握手に応じ、ペコリと頭を下げた。

べつにお付き合いしろと言われているわけではないし、初対面でも食事をするくらいならいいかな。竹澤さんだって、私みたいな平凡OLとはこれっきりのつもりだろうし。
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