カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~
無責任に手を振りながらラウンジを出て行く斗真さんの背中に呆れた視線を送った後、とにかく今は竹澤さんとの食事を失礼なく済ませなければと覚悟を決め、笑顔を作る。
「じゃあ、行きましょう」
「はい」
竹澤さんも嘘か本当かは置いておいて、笑顔で接してくれ、完璧なエスコートをしてくれる。
自然に手を取られたとき、あの夜、私の手を握ってくれた隼世さんの焼け付くような熱が甦った。
あのときの彼の手は、ぎこちなくて、汗ばんでいた。
この人のは、まるで違う。この手には熱もなにもない。夜景と初対面の人を前にして緊張していた気持ちは冷めていき、私はぼんやりと竹澤さんに付いていった。
窓際の予約席へ案内され、ドリンクを注文する。一杯目だけスパークリングワインで乾杯をし、コースの前菜をいただきながら、雑談を始める。