カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~

デザートの盛り合わせが運ばれてくるのと同時に、竹澤さんのスーツの中でピリリと小さく音が鳴り、私は顔を上げる。

「失礼、仕事の電話なので、出てきてもいいですか?」

「も、もちろんです。どうぞ」

彼は本当に申し訳なさそうに首でお辞儀をし、胸ポケットを探りながらラウンジを出て行った。彼が完全に見えなくなってから、私は背もたれにうなだれてフーッとため息をつく。

『……すごく、かわいい』

あのときのような隼世さんの真っ直ぐな瞳は、私に魔法をかけたようだ。ほかの男性の褒め言葉は、すべて嘘だと感じてしまう。
ダメだ。全然、忘れられる気がしない。

一度でいいから、隼世さんと恋人みたいに、こういう場所に来たかったなぁ。

「ちょっとちょっと! 星野さん! あなた星野さんでしょ?」

「……え?」

気が抜けていたところへ聞き覚えの声がし、ギョッとして背筋を戻す。
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