カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~
「……そんなに忙しいんですか?」
繁忙期ではないし私が抱えている仕事と終わっているはずだから、そこまでになっているとは思っていはかったんだけど。
「そうじゃなくて! 奥さん候補の星野さんが突然いなくなったら元気なくなるに決まってるじゃない!」
「ええっ!? やだ、そんなわけないです……」
そういえば、パートさんたちの中ではその設定が流行っていたっけ。好きな人の奥さんと囃し立てられては顔が熱くなるものの、同時に、一度は手が届きそうだった彼の奥さんにもうなれないのだという絶望が湧いてくる。
「それなのに、星野さんはこんなところでお金持ちそうな男の人とデートだなんて! すみに置けないんだから! ダメよぉ、浮気だって課長に言い付けちゃうからねぇ? 絶対、課長の方がいい男だから! ね、考え直して!」
冗談を交えて捲し立てられ、私はスカートを膝でギュッと握り、虚しさに耐えた。
私だって、誰よりも課長が好きだ。でもそう思っているのは私だけだったんだもの。