カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~
ガタン、とクローゼットは音を立てる。俺は「まさか」とこの状況を察し、今度こそ頭が真っ白になった。
斗真のやつ! 謀ったな!
なにを口走ったっけと記憶を逆再生しようとするが、恥ずかしさでそれどころではない。
なにも嘘はない。彼女に伝えたかった言葉だ。でも、もっと彼女へ向けた言葉は熟考し、推敲した上での台詞を用意したかったのに。
「斗真っ……お前」
とにかく恨みつらみをそばにいる斗真を睨んでぶつけるが、軽く笑われ、奴はクローゼットの取っ手に手を掛けた。
「星野さん、もう出て来ていいよ」
キイ、と音を立てて開いた扉の中から、心の底から会いたいと願っていた菜々花さんのシルエットが見え、彼女がヒールのままでクローゼットからカーペットへ降りると、その顔が露わになる。
「……な、菜々花、さん」
彼女は滝のような涙を流しており、頬は赤く染まり、中は息苦しかったのか呼吸が乱れている。
それが色っぽくて、いつかの風呂でかち合ったときの紅潮した彼女に似ていて、息を飲んだ。
好きだ。
ーーどうしようもないくらい、好きだ。