カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~
静かな中でエレベーターの機械音だけがし、いやに冷静になった。
よく考えたらこの状況、誰かに見られれば誤解されてもおかしくない。
力強く肩に回されている腕から逃れてそっと隙間を作ろうとするが、彼は先ほどから人肌恋しいのかそれを許さない。
くらりとくる甘い匂いが漂っている。ピーチやカシスのような、果実の匂いだ。
おそらくパートさんたちが、自分が頼んだジュースのようなお酒を次々と彼に飲ませたのだろう。
「ハァ、ハァ」
息は少しずつ整ってきている気がするが、屋内に入って温まったせいか、先ほどより熱さが増している。
密室でこんなに密着しては、私まで呼吸が荒くなりそうだ。
廊下を進み、部屋へ入る。
白い壁にグレーの絨毯、広くはないがふたり部屋ということもあり、課長ひとりなら悠々と寝られる広さのベッドが置かれている。
「課長、ほら、ゆっくり座ってください」
肩にもたれていた彼を降ろしてベッドの上に座らせ、とりあえずジャケットを脱いでもらって預かり、鏡台の椅子へと掛けた。
彼はうつむいたまま自分で深く腰かけ、肩で息を整え始める。