身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~
ぶっきらぼうな桜門の声が聞こえた。
文月は小さく頷いた。文月が立ち上がろうといた瞬間に、看護師さんがこちらに駆け込んできた。それを見て皆はすぐに状況を察知して、緊迫した表情になる。
「文月さんもいらっしゃってください」
「はい」
文月は駆け足で病室へと向かう。フッと後ろを振り返ると、桜門は何も言わずにゆっくりと歩いてきている。大分距離があるが、彼が不機嫌そうなのは伝わってくる。
やはり、彼はこの依頼を受けるのが嫌だったのだろう。
けれど、こなしてくれた。
彼の願いを叶えるために。
「白銀さんっ!!」
無意識に歩いていた文月は、その叫び声にハッとして病室へと急ぐ。白銀の周りには社員が涙を浮かべながら必死に声を掛けていた。
けれど、白銀は苦しそうにもがくだけで、こちらには全く気が付いていない。