政略夫婦の授かり初夜~冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す~
 それなら自由になりたい。両親の顔色を常に窺うような、窮屈なこの大きな家から出たい。
 敬一と離れて暮らすのは寂しいけれど、会おうと思えばいつでも会えるもの。

「それは子供の頃の話でしょ? 西連地さんのような人と結婚したほうが幸せになれるかもしれない。だってお金には不自由しないだろうし」

 冗談交じりに言ったというのに、敬一は悲しげに瞳を揺らした。でも少しして小さく息を吐く。

「たしかに西連地家に嫁げば、うちよりもっと裕福な暮らしができるだろうし、姉さんが苦労することもない。変な男と結婚するよりはマシなのかもしれないな」

 どうやら納得したようで、敬一は力なくソファに腰を下ろした。そんな敬一の隣に私も座る。

「今度、顔合わせするんでしょ?」

「うん、そうみたい」

「会って無理そうだったら、ちゃんと父さんに言ったほうがいいよ。結婚してからじゃ遅いんだから。どういうやつなのか、しっかり見極めてくること。性格の不一致ってものもあるだろうし」

 昔から敬一は私に対して過保護なところがある。これではどっちが年上かわからないな。

 クスリと笑いながら「わかったよ」と言うと、敬一は「くれぐれもね!」と念を押す。

 見極めるもなにも、お父さんの口ぶりからしてもう結婚は決定事項。結婚前の顔合わせといったところだろう。
< 11 / 235 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop