同期の御曹司様は浮気がお嫌い
「電話が鳴ったから美麗のだと思って出ちゃったのー。色が似てるし……ごめんねー……」
美麗さんはまだ意識が朦朧としていそうだ。
確かに私と美麗さんのスマートフォンは色が似ている。私は普段からロックをかけていないので酔っていても簡単にタップできてしまったのだろう。
「あの……この電話は忘れてください……」
「うーん……」
美麗さんは再び寝てしまったようだ。
油断していた。美麗さんとの時間が楽しくて下田くんのことを失念していた。このままでは優磨くんにバレてしまうのも時間の問題かもしれない。
翌朝、運転手さんが迎えに来たので帰っていく美麗さんを見送るとパン屋に出勤した。
夕方までの勤務を終えて、下田くんに呼び出されていつかと同じようにカラオケボックスに入り封筒を差し出した。
「これでもう連絡してこないでください」
「は? たったこれだけ?」
封筒の中の数万円を下田くんは馬鹿にしたようにひらひらと揺らす。
「言ったでしょ。私もお金ないの」
慶太さんの店で働き出して初めての給料を渡す苦渋の決断だ。
「優磨の口座から抜けって言っただろ」
「優磨くんを巻き込むつもりはない。そのお金でも十分でしょ」
「なら城藤不動産だっけ? 会社に御曹司の恋人は不倫女だってバラす」
下田くんは動揺する私の顔をニヤニヤと見つめる。
「優磨って波瑠にすっげー愛されてるんだね。妬いちゃうよ」
嫌みのように囁く言葉に吐き気がする。
「本当にもうこれで諦めて……連絡もしつこくて誤魔化すの無理」
「波瑠がポンッと百万くれれば連絡しないんだけど。まあ、毎日波瑠の声が聞けて嬉しいよ」