同期の御曹司様は浮気がお嫌い

身動きが取れないでいるうちに着信音が途切れた。

「俺がいない間に何してたの?」

「し、仕事……今日出勤日だから……」

「じゃあこの付けられたばかりのキスマークは何?」

下田くんに付けられただなんて言ったら増々怒り狂うだろう。

「最近の波瑠は変なんだよ。いい加減その理由を説明して。どうしてスマホを気にするの? 誰と連絡とってるの?」

優磨くんに黙ったままでいられる段階じゃない。言わなければ。

「……っ」

それなのに言葉が出ない。優磨くんの目が今までにないほど怖くて、そんな目を向けられていることに怯える。吐き気を感じ始めた。
優磨くんは無言の私に苛立ちを募らせたようだ。

「何があったの? トイレにもお風呂にもスマホを持っていくし、ぼーっとしてる」

「実は私……」

ピリリリリリリ

またも着信音が響く。
今度は優磨くんが私から離れリビングに向かう。足音をドンドンと立て機嫌が悪いことが分かるように。

「どうして下田から電話がかかってくるの? もう別れてるんだよね?」

優磨くんは私のスマートフォンを顔の高さまで掲げて睨む。

「私下田くんに……」

話そうとすると優磨くんは手を上げて私を制するから何も言えなくなった。
優磨くんの指が画面をタップした。スピーカーになったのか着信音が大きくなる。もう一度画面をタップすると「おい、無視するなって」と下田くんの声が部屋に響いた。

「…………」

優磨くんは無表情のまま何も言わずスマートフォンを見つめている。

「波瑠? おーい……」

下田くんは優磨くんが聞いているとも知らずにいつも通り呑気に私の名を呼ぶ。

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