同期の御曹司様は浮気がお嫌い
「どう? 波瑠」
「まだ言ってなかったのか?」
「波瑠を驚かせたくて」
慶太さんは呆れた顔をする。
「以前の会社では営業職だと伺いました。接客、販売は未経験でも大丈夫だと思います。新店舗のパン製造は専門のスタッフがやりますので、接客とパンの販売、店内飲食時のドリンク提供をお願いします」
「どうかな? 慶太さんのとこなら俺も安心だし」
優磨くんは考えがあって私をここに連れてきたのだ。願ってもない話だ。
「あの……やりたいです。働かせてください」
私が慶太さんに頭を下げると横に座る優磨くんも頭を下げた。
「ありがとうございます!」
「詳しいことは後日連絡します」
「はい。よろしくお願いします」
慶太さんに手を振りながら店を後にした。
「よかった。波瑠が慶太さんのとこに行ってくれて」
「言ってくれればよかったのに。心の準備が……」
「波瑠に慶太さんの店を客観的に見てほしかったんだよ」
「いたいた! 優磨くん!」
前から聞こえた声に目を向けると、女性が私たちのもとに歩いてくる。その腕には小さいお子さんを抱いている。
「美紗さん!」
優磨くんは手を上げて応える。
「波瑠、慶太さんの奥さんだよ」
「あ、こんにちは」
目の前で止まった女性は慶太さんとお似合いの綺麗な女性だった。
「こんにちは」
女性は私と目が合うとニコッと笑う。
「美紗さん、こちら俺の恋人の波瑠です」
「安西波瑠と申します」と慶太さんにした自己紹介と同じことを美紗さんに言う。
「こちらが優磨くんが何年も大事に想ってた人ね」
美紗さんの言葉に私も優磨くんも顔を真っ赤にする。
「美紗さん……その話はもう……」
「ふふ」っと美紗さんは笑う。