同期の御曹司様は浮気がお嫌い
「今日はありがとう。波瑠に二人を紹介できてよかった」
「私もありがとう。仕事も決まって安心した」
「慶太さんのそばなら俺も安心だよ」
車に乗るとしばらく私は無言で考え込んだ。
「波瑠?」
「優磨くん……聞いてもいい?」
「ん?」
「どうして慶太さんには美麗さんのことを言ってはだめなの?」
「あー……」
「ごめんね、踏み込んで聞いちゃって。でも今後慶太さんのところで働く前に知っておいた方がいいことがあるなら教えて」
「…………」
ハンドルを握る優磨くんは眉間にしわが寄る。やっぱり聞いてはいけないことだったのだろうか。
「前に波瑠を姉さんに近づけたくなかったって言ったでしょ?」
「うん」
「あれは姉さんが下田と同じだからなんだ。姉さんは慶太さんと付き合ってたんだよ」
「え!?」
「慶太さんと婚約中に姉さんが浮気してたんだ。それが分かったのが結婚式当日で、姉さんが浮気相手と式場から逃げちゃって」
「…………」
「俺の父が追いかけて説得したけど姉さんは戻らなかった。形だけの披露宴は葬式みたいだったし、慶太さんの職場の人も招待してたから会社も居辛くなって転職した。精神的に不安定になって一時期は相当参ってたよ。慶太さん本人も俺や周りもね」
想像以上の過去に言葉が出ない。
「だから俺はあんまり波瑠と姉さんを近づけたくない。波瑠を傷つけるようなことをしでかすかもしれないから。本当は俺も慶太さんには会わない方がいいんだけど、俺は姉さんとのことがあるもっと前から慶太さんと友達だし……」
「そうだったんだ……」
美麗さんが慶太さんと……。今日初めて会った慶太さんといつも明るい美麗さんにとんでもない過去があったなんて結びつかない。