同期の御曹司様は浮気がお嫌い
「ありがとう、話してくれて……」
「波瑠には何も隠したくないから」
優磨くんが「ふっ」と笑った。
「また嫉妬してくれた?」
面白そうに笑うから悔しくて「いい気はしない」と不機嫌な声を出して拗ねて見せた。
「優磨くんの口から女の人の話聞きたくない……」
優磨くんの片手が伸びて、膝に置いた私の手を握る。
「嫉妬する波瑠も可愛いよ」
握った手に力を込めて機嫌が悪いことを大袈裟にアピールすると「痛いから」と優磨くんはまた笑った。
温かい手の感触をもっと感じたくて、私は更に指を絡めた。
◇◇◇◇◇
仕事に行く優磨くんを見送り掃除も一段落したころに電話が鳴る。スマートフォンに『下田浩二』と表示され目を見開いた。
この間会って完全に関係を切ったと思ったのに、いったい彼はどうしたいというのだろう。もう着信拒否してアドレスを消してしまおう。
数秒待つと着信音は止んだ。そのまま画面を操作して下田くんの連絡先を消そうとするとまた着信がある。
今日は本当にしつこいな……。
戸惑ったけれど私はもう連絡をしないでと言うために画面をタップした。また公衆電話からかけてこられても困ってしまうから。
「もしもし……」
「波瑠、突然悪いんだけど今から出てこれる?」
「え?」
「今から会いたい」
「…………」
そんなことを言われると思っていなくて言葉が出ない。
「来ないと後悔するよ?」
「なにそれ……どういう意味?」
「とにかく来て」
「嫌……もう会わない。連絡もしないで……」
「優磨のためを思うなら来て」
「え……優磨くんは何も関係ない……」
「それはどうだろう。優磨にとってはそうじゃないかもしれない」
「このまま電話じゃ済まないの?」
「直接会いたい。じゃないと俺は優磨を困らせるよ」
「……分かった」