副社長が私を抱く理由~愛と殺意の先に~
「社内では、屋崎さんとお前が再婚したことになっている」
「ああそうだけど。面倒だから、何も言わないだけだ」
「沈黙を通すのはいいが、お前と風香ちゃんは離婚したとも言われている。このままでは、いけないと思っているのだが。お前はどうする気だ? 」
「別に。どうする気もないけど? 」
「このままでは…風香ちゃんだって、戻ってこれないじゃないか」
そう言われると宇宙は黙ってしまった。
「宇宙。私は、いつでもお前の味方だ。いつでも力を貸すから」
「…少し時間が欲しい…。ちゃんと、話すから…」
「分かった。あまり無理をするな」
「…うん…」
空斗がいなくなり一人になった宇宙は少し遠い目をしていた… …。
「…風香…。いなくなったのは…怪我をしたからか? 」
宇宙は自分の手を見つめた。
涼花の頭に触れたとき、助けを求める声が聞こえた。
2度も聞こえた声に間違いないと宇宙は思っている。
(宇宙さん…好きです…貴方に嫌われても…)
無意識の中で涼花が言った。
その言い方は…宇宙の前妻である風香に似ていた。
宇宙の前妻である風香は、5年前まで宗田ホールディングで社長秘書をしていた。
風香の容姿は世間でいう不細工な容姿だった。
目が極端に細く、顔がむくんでいて、口はへの字で下がっていて唇は厚い。
通り行く人が「不細工」と口にするほどだった。
それでも明るい笑顔で、優しい対応をしていた風香。
家族のことを話したがらない風香だが、地味であまり着飾らない風香を見て周りは貧しいと思い込んでいた。
だが、社内祝賀会の時。
女子社員はみんな高級ドレスに身を包んで現れた。
周りは楓子は貧しくてドレスなんて着れないと思い込んでいたが。
風香は見違えるほど綺麗なドレスに身を包んで現れた。
いつも化粧をしない風香だが、綺麗にメイクもしていて、長い髪はハーフアップに結っていた。ドレスはロイヤルブルーの膝丈ドレスで、背が高い風香が着るとスカート丈は短くなっていた。靴もブランド品のハイヒールで総額数千万はかかっていそうな格好に、周りは驚き声も出なかった。
祝賀会の帰りに、風香は迎えに来てもらっていた。
会場の下に停まっているリムジンのような高級車に、帰ってゆく社員は驚いていた。