副社長が私を抱く理由~愛と殺意の先に~

 副社長室へ戻った宇宙は午後の仕事を続けた。

 仕事の合間に空斗に、風香の親戚の事を聞いて見たり、風香の親戚の人から送り返されてきた、年賀はがきの事を詳しく聞いたりしていた。


 空斗からの情報では、風香の親戚は東条(とうじょう)と言う苗字である事、昔からの財閥で銀行頭取である事。
 今は海外へ移住したと話もあるが、現在どこに住んでるのかは不明。
 ただ5年前に、東条氏の身内が医師をしていたが姿を消してしまった話を聞いている。
 
 風香の父である風紀も医師だった。
 何かつながりがあるかもしれないと宇宙は思った。




 
 今日は定時で帰れることから、時間になると宇宙は退社した。

 
 オフィスビルを宇宙が出てくると、有香が待ち伏せしていたのか歩み寄ってきた。

「副社長。今日のお昼の事なんですけど」

 
 ん? と宇宙は有香を見た。

「あの、とても言いずらいのですが。あの時、私、北里さんに足を引っかけられてしまって。それで、うどんをこぼしてしまったのです」

 はぁ? なにを言っているんだ?
 どう見てもあれは、自分でひっくり返した事だが?

 宇宙はちょっと呆れたように有香を見ていた。

「信じてもらえなくても仕方なですが。私が、うどんを持ってゆく事にしか目が行っていなくて、足元を見ていなかったのが悪いのですが。本当に急に、足を引っかけられてしまって。自分でもびっくりしたんです」


 目を潤ませて見つめてくる有香。

 そんな有香が気持ち悪く、宇宙は寒気を感じた。


「信じて下さい! 私…北里さんに、ずっと嫌がらせされているんです。奥さんが怪我をした日も、私も呼び出されていたんですよ。あの階段に。私は行かなかったのですが、もし行っていたら階段から突き落とされていたかと思うと、今でも怖いんです」

 階段から突き落とされた? おかしい、誰も階段から重乃が突き落とされたとは、話していない。
 警察でも転落事故として処理されている。
 重乃が階段から落ちてきたのを目撃したのは、涼花と俺だけ…。
 もう一人いるとしたら…

 あ!
 何かに気づいた宇宙。

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